コンサルタントの仕事【コンサル業界研究シリーズ②】
こんにちは、就活の鷹です。
新卒/中途ともに人気のコンサル業界ですが、皆さんはコンサルタントがどのような仕事をしているのか本当に理解していますか?
「経営課題を解決してるんだ!」というのは間違っていないのですが、それはファーム(およびプロジェクトチーム)の提供価値であって、コンサルタント(特に若手)が実際にやっている仕事とは若干の距離があります。
実際、良く知らないまま入社した結果、「思い描いていた仕事じゃない…」という理由から辞めていく方が後を絶ちません。そういったミスマッチを減らすためにも、今回はコンサルタントの具体的な仕事内容を解説しようと思います。
注意: 以下をご留意の上、お読み頂ければ幸いです
・我々は戦略ファーム所属のため、戦略ファームでの仕事内容に関する記述が多めです
・できるだけ平均値をとるようにしていますが、ファーム/プロジェクト/個人によって働き方や仕事内容は大きく変わります
コンサルタントはプロジェクト単位で仕事をする
前回の記事で述べたように、コンサルティングファームは「クライアントの課題を解決する」ことが提供価値です。その課題解決が終われば、コンサルの役目は終わります。
そのため、コンサルタントは(基本的に)特定の企業に入り続けるのではなく、期間限定で入ることになります。この1つのサイクルを「プロジェクト」(もしくは「ケース」)と呼び、コンサルタントはプロジェクト単位で仕事をすることになります。
学生にとって身近な例でいうと大学の期末試験が近いかと思います。コンサルタントは忙しい時とそうじゃないときの差が激しいとよく言いますが、これはプロジェクト単位で働いていることが原因です。「試験前日に徹夜で勉強して間に合わせる」みたいなことが、プロジェクトの最終報告前にも発生するわけです。
案件によって期間は違いますが、戦略コンサルティングファームの場合、1プロジェクトを3~6か月で回すことが多いです。百倍勉強する期末試験が年に2~4回あるといった感じです。学生が終わっても詰込みから逃げ出すことはできません(笑)
なお、1つのプロジェクトが終わっても内容を変えて同じクライアントと続けることもあります。全社戦略 → 海外進出戦略 → M&A戦略 → FA(フィナンシャルアドバイザリー) → PMI(買収後統合)支援 といった感じです。実際にこんな上手く案件取れることはあまりありませんが…
コンサルタトの具体的な仕事内容
プロジェクトの進み方
プロジェクトは、一般的にはですが、案件を取ることから始まり、最終報告をして終わります。具体的な流れは以下の図の通りです。
①案件を獲得する
まずはクライアントを見つけなければいけませんが、それには大きく分けて以下の3つの方法があります。
- クライアントからの持ち込み相談
- ファームからピッチ営業をかける
- コンペで勝つ
⒈クライアントからの持ち込み相談
1つ目はクライアントから相談しに来るパターンです。パートナーが懇意にしている経営者から相談を受ける、というのが一番イメージしやすいとは思いますが、他にも、ファームが出版している経営戦略本や開催した経営セミナーきっかけで相談が来ることもあります。
このパターンは、経営者が課題を抱えているのが確定しているので、案件になりやすくファームにとって一番ありがたいです。この場合でもピッチで使うような資料を作成することになります。
⒉ファームからピッチ営業をかける
2つ目はファーム側から営業をかけるパターンです。「○○社は、今季の決算が振るわなかったから、××あたりで課題を抱えてそうだ。そのニーズを狙って営業をかけてみよう」というように、課題を抱えてそうな企業に「うちならこういう風にして解決できますよ」と営業をかけるわけです。これをピッチ営業、その営業で使う資料のことをピッチ資料と呼ぶことがあります。
仮説をもとに営業をかけるわけですが、相手がコンサルを必要としているかは正直やってみないと分からないため、案件になる確率はそこまで高くありません。
⒊コンペで勝つ
3つ目はコンペで他のファームと競い合うパターンです。クライアントが複数のファームに声をかけ、提案書を出させたうえで、どのファームに依頼するかを決めます。「○○にコンペで負けた!」みたいな会話がファーム内で起こったりします。
最終的には顧客の判断によって決まるので、ファームとしては案件を取れるか読みづらいところです。またコンペによってはもとから勝つファームが決まっている場合もあり、コンペはあまりやりたくないのが各ファームの本音です。
②社内でプロジェクトチームを立ち上げる
案件が取れれば、提案書の内容に従ってプロジェクトチームが立ち上がります。具体的には提案した人数や値段、期間などの内容に沿ってチームが立ち上がります。
案件が取れそうになってくると、社内のコンサルタントの稼働状況や経験、スキルを加味し、誰をメンバーに加えるかという議論が偉い人の中で起こります。既にパートナーやマネージャーに囲い込まれているスタッフがそのままメンバーになることもあります。評価があまりよくない人はここでメンバーに選ばれず、誰もやりたがらない案件にアサインされたり、アサインすらされずアベイラブル(もしくはビーチ)状態になってしまいます。
多くのファームでは誰がマネージャーやるかは最初の時点で大体決まっています。
③プロジェクトを進める
実際にプロジェクトが始まるとキックオフのミーティング等でお客さんと顔合わせをします。その後もヒアリングや中間報告等で何度も顔を合わせます。プロジェクトの内容によってはプロジェクト中は一緒に働き続けることもあります。
チーム内では最終報告・中間報告・パートナー等偉い人たちの集いから逆算した形で日々のゴールを決めて仕事を進めていきます。
例えばある会社の成長戦略を3か月のプロジェクトでやると決まれば、二週間後の一回目の中間報告では市場環境のみの報告をすると決め、その報告までに偉い人との議論を二回挟むのでいつまでにこれとこれを終わらせる。といった形です。
よくプロジェクトが炎上したと聞きますが、その場合は最初の成果物がそもそも高望みすぎた、お客さんからの要求が大量等の原因があります。
④最終報告
最初にお客さんが持っていた課題に対しての答えを報告します。それ以外にも、今までの成果物や今後の進め方、分析データ等クライアントへ資料の引継ぎをします。
実行まで支援するファームの場合、スコープを変えて同じプロジェクトが続きます。
またスポンサーとパートナーの仲がいい場合はそのまま別の案件につながったりもします。
各タイトルごとの役割、仕事内容
コンサルは基本的にチームを組んでプロジェクトに取り組みます。同じ役割を担う人間が何人もいてもしょうがないので、チームは様々なタイトルのコンサルタントによって構成されます。
これはファームによって区分や名前は異なりますが、コンサルタントには以下のようなタイトルがあり、タイトルごとに大まかな仕事内容が規定されています。
※ ファーム/個人によって全て異なります。上記はヒアリングに基づく参考値です
コンサルタントやアナリストといったプレイヤー階級(=実際に手を動かしてスライド作成やリサーチなどを行う層)のほうが労働集約的な仕事が多く、ある程度の人数が必要なので、ファーム内の人数比率は基本的にピラミッド型になります。
案件の大きさやファームの人員状況にもよりますが、プロジェクトチームは基本的に以下のような構成になります。
- パートナー1人
- マネージャー1人
- コンサルタント1人
- アナリスト1~2人
では各タイトルの具体的な仕事内容を解説していきます。
具体的なイメージのために、もしクライアントの依頼が「自社のコストを削減してほしい」だとします。(ただの一例です)
パートナー: 案件の獲得やファームの経営を担う
普段はお客さんとの食事、パーティーへの参加、講演会など関係構築系の仕事が多いです。ファームやパートナーによってはクライアントに成果物を発表したり、問題解決そのものに関わったりする場合もあります。ファームの経営に関しては、経営計画の策定、外国にある支社とのコミュニケーション、面接などの仕事もこなします。
ケース面接でやるようなレベルでの問題解決はパートナー・マネージャーレベルの物が多いです。例の場合、問題解決をするパートナーだとマネージャーに対してこの会社のこの業界だとこの辺りにコストがありそうだとインプットしたり、下から上がってきた分析に対してここはおかしい、ここをもっと調べようといったコメントをしたりします。
マネージャー: プロジェクト全体の管理
マネージャーの仕事は一言でいうとプロジェクト全体の進行と成果物の品質管理です。
前者に関してはチーム内でのワークプランの設定とミーティングの参加等のクライアント対応が主です。
後者はハイレベルな問題解決方法の設計(こういうことが言えればいいなど)、パートナーとの議論、コンサルタント以下の成果物に対するインプットなど多岐にわたります。
例の場合、こことここのコスト(例えば販管費)を調べると決める、この段階までのアウトプットをここまでに出してほしいとコンサルタントに支持をする、出てきたコスト削減の仮説に対してコメントをする等です。
クライアントにコスト内訳のヒアリングをしたり、ミーティングでここのコストがこのくらい削れそうだといったアウトプットにフィードバックをもらったりもします。(コンサルタントもしますが、お客さんの担当者の年次が往々にして高めです)
コンサルタント: プロジェクト一部の管理
マネージャー・パートナーによって決められた答えに対してそれを立証するために必要な分析やストーリーの仮説を立てます。そしてアナリストに具体的な分析・データなどの指示をします。時には自身で分析もします。
クライアントにもデータリクエスト・ヒアリング・ミーティングをします。
販管費を調べると決めたら、販管費をどのような切り口で見るか、なにと比べるか、どうやってそれをクライアントにコミュニケーションするかを考え、マネージャーと合意します。それを決めたらアナリストにオフィス費用が高いから、それをこういう項目ごとにオフィスごとで比べよう、そのためにこういう分析をしようといった指示を出します。報告の際にはこういうスライドにしたいという指示もします。
アナリスト: 分析・雑用
プロジェクトを進めるにおいてコンサルタント以上がしないことをすべてします。
分析・リサーチ・会議室などの調整・必要なものの手配、、、等々です。
上司によってそれらをどのくらいの裁量でやるかは異なります。このコストに問題があると思うからどう見るか調べて考えといてという温度間の人もいれば、ここのコストをこういう切り口で見たいからこれとこれを調べてこういう方法で分析しておいてという人もいます。(あとはその人がどのくらい上司に信頼されているかにもよります。)
最初のほうはケース面接でやるような大きな問題解決ではなく、このデータがとれないからこういう手段を使う、この情報はここからとれそうだ、こうやればこの作業は効率がよさそうだといった小さな問題解決が主です。(といってもそれがお客さんの課題にどういう影響があるかという大きな視点を持っていないと怒られます。)
年次が上がってくると議論に参加して問題解決の一部を担ったり、作業の設計から示唆の抽出などコンサルタントに近い仕事になってきます。
販管費の例でいうと、販管費の削減の文献を調べてまとめてコンサルタントに報告したり、クライアントからの販管費のデータが分析可能かどうか見たり、それをエクセルを使ってオフィスごとに分析したり、クライアントにデータをリクエストしたり、ミーティングの際の会議室を予約したり、会議に必要な書類を印刷したりします。報告の際にはコンサルタントから指示のあったスライドを作ります。
とある新米コンサルタントの一週間
プロジェクトの内容によって変わりますが、前述の販管費の例を使い、普通の一日、忙しい一日のモデルケースをご紹介します。かなり一般化しているのであくまでご参考までに。
比較的プロジェクトが落ち着いている期間
9:00 出社
9:30 ミーティング
10:00~12:00 エクセルのデータをまとめてどんなことができそうかを考える。その間にも多少雑務
12:00~13:00 オフィスの外でご飯を食べる
13:00~13:30 コンサルタントと午前の作業について話して午後の分析の方向性を決める
13:30~17:00 ひたすら分析を進める
17:00~17:30 コンサルタントと分析について確認、フィードバックをもらい、その日のゴールを決める。
17:30~ 22:00 途中でご飯を食べつつ、その日のゴールへ向けて作業を進める
ファームにもよりますが最近は19時から24時に帰宅時間が収まっているという話を多く聞きます。
かなり忙しい期間(最終/中間報告前など)
9:00 出社
9:30 ミーティング
10:00~12:00 ミーティングで決まったスライドの作成及びそのために必要な追加の分析
12:00~12:30 お弁当を食べながら仕事
12:30~13:00 パートナーを含めたミーティング。作成したスライドに関してのフィードバック。
13:00~17:00 フィードバックの反映。追加スライドの作成。
17:00~17:30 コンサルタントと作成したスライドについて確認、フィードバックをもらう。
17:30~20:00 (途中でお弁当を食べながら仕事)フィードバックの反映。スライドの作成。
20:00~21:00 チーム全体でミーティング。その日のゴールを決める。
21:00~27:00 ひたすら分析とスライド作成。日によっては徹夜。
終わりに
いかがでしたでしょうか。
我々も実際に働いてみてイメージや期待と違ったことも多くありました。その違いにより退職してしまう人も多くいるので、できるだけそういう人を減らしたいと思いあえて一般化した上で具体的に書きました。
働き方はファームによって大きく異なるので、内定を得た後はこの記事にあるような項目の具体的な話を知人や社員の方からしっかり聞いてから入社先を判断されることをお勧めします。
また、近年はコンサルティング業界も労働時間の規制により、どんどんホワイトになってきています。プロジェクトの内容や時期によってかなり振れ幅はあるものの、多くのファームで帰宅時間の平均は22時より早いような印象を持っています。
年次が上がると裁量労働制(またはそのような制度)が導入され、労働時間は長くなりますが、年収もそれに比例して上がるので労働時間と収入の比率を考えると割と魅力的な職業である気がします。
ただ、労働時間が限られてもお客さんから求められるものは同じなので、無駄なく効率よく働くことが昔よりも求められています。その上、業務時間が減るのでどうしても昔のコンサルティング業界と比べると成長機会は限られてしまいます。成長を第一に求める方は業務時間外もうまく活用する必要が出てきていると言えます。
もっとこういう話を知りたい等のご要望があればお伝えください。書いても問題のなさそうな範囲で書きたいと思います。